ywagashiのブログ

徒然なるままに

9月に読んだ本

ここ最近の日常はどこか精彩を欠いている気がする。暇ができたら旅行にでも行こうかな。

 

・寝ながら学べる構造主義内田樹/著)

ソシュールレヴィ=ストロースといった構造主義を基礎づけた思想家について平易な説明がなされている。「寝ながら学べる」というタイトルは大げさではなく、ざっくり一通り読めば構造主義の何たるかが理解できたような気になれる。文化や言語が人々の思考や行動を規定していると言えば、当然のことを再発見しただけにも思われるが、それらを構造として抽象し、学問として体系化することには大変な意義があるのだろう。引き続き理解を深めていきたい。

フーコー入門(中山元/著)

フーコーの思想を時系列に沿って解説している。これを読むとフーコーがいかに歴史研究を重視していたかが分かる。過去に目を向けることは自己のものの見方を相対化することに繋がるから、歴史がフーコー構造主義的な視点をもたらしたのかもしれない。真理とは歴史的に形成されるものであり、その絶対性を崩壊させることに哲学の務めがある、とフーコーは考えていたという。このことはフーコーが管理社会やマイノリティ抑圧に対する抵抗を訴え続けていたことからも窺い知れる。

ミシェル・フーコー(重田園江/著)

フーコー二冊目。 こちらは特に生権力の思想について焦点を当てている。自分の読解力不足もあろうが、話が行ったり来たりして理解が追い付かなかった。読んでいる箇所が、フーコーの思想として広く受容されていることなのかそれとも著者の独自解釈なのか区別しがたいことも気に障る。一冊目のほうが遥かに有益。

・武器としての世論調査(三春充希/著)

世論調査の方法や実態、および選挙との関連について解説されている。各報道機関が、質問誘導やバイアスを防ぐため様々な工夫を凝らしていることを知り、世論調査の信頼性を見直すきっかけが得られた。大切なのはデータの正しい見方を知り、世論の実像を総合的に把握すること。それにより世論調査を武器とし、自らの投票行動に役立てることができる。

・入門 犯罪心理学(原田隆之/著)

Kindle版が安かったので購入。エビデンスに基づく犯罪対策の重要性が説かれている。メディアは凶悪事件の背景を何かと単純化しがちであるが、犯罪行動に至るまでの過程は特定の原因に帰着できるほど単純ではない。複合的な要因を勘案しながら、犯罪者の内面を分析して更生へと導くことが重要とされている。日本の司法は厳罰化の方向に傾いているが、ここでは厳罰化政策にほとんど犯罪抑止効果が認められないことも述べられている。もちろん刑罰には国民感情の問題が付きまとい、合理性だけが全てではないが、犯罪心理学をはじめとする学問の成果が現場に積極的に取り入れられていくことを望む。

完全自殺マニュアル鶴見済/著)

そのタイトルに嘘偽りなく、自殺について細かく書かれた本。薬品、首吊り、飛び降り、ほか様々な自殺方法について、その具体的な手順や苦しさなどが記されている。首吊りと首絞めは別物、窒息死とガス中毒死では苦しさが格段に異なる、などなど目から鱗の情報もありなかなか勉強になった。エピソードや関連資料も豊富で、誤解を恐れずに言えば読み物としても非常に楽しめる。筆者曰く、この本を通じて「閉塞した世の中の風通しをよくしたい」とのこと。これには賛否両論あるだろうが、確かにいざとなれば死ねるという意識を持ち、自殺の方法を心得ておくことで、却って気楽な生き方ができるという側面は大いにあると思う。

現代思想の教科書(石田英敬/著)

現代における世界と知の関連を4つの様相(ポスト‐グーテンベルク,モダン,ナショナル,ヒューマン)として特徴づけ、そこから浮かび上がる15のトピックについて解説がなされている。いま、グローバル化や情報化によって、世の中は目まぐるしく変化している。その中で思想のあり方も変容を迫られ、今までになかった論点が浮き彫りになっていることも大いにあろうと思う。伝統的な哲学とは一線を画す、現代思想の全体像をつかむのに持って来いの一冊。

・人を殺すとはどういうことか(美達大和/著)

無期懲役囚として服役中の著者が、自身の半生や他の受刑者について綴った本。断定的な物言いが少々気になるところではあるが、受刑者の立場から、犯罪者の心理に切り込んだ貴重な資料である。犯罪者は刑罰を通して自身の罪に向き合うことを期待されているが、結局それは理想論に過ぎない。一握りの真っ当な者たちを除けば、大半の受刑者は罪の意識も反省の欠片もなく、仮釈放までの日々をただぼんやりと過ごしている。あまり悲観したくはないが、彼ら全員に更生の可能性があるかと言ったらそれは嘘だろう。

・Konosuba: God's blessing on This Wonderful World! (Vol.1) (暁なつめ/作)

ライトノベルこの素晴らしい世界に祝福を!』の英訳版。見たことない単語もそこそこ現れるが、高校卒業レベルの英語力があれば無理なく読めると思う。電子版で読んでいるので、分からない表現に出会してもすぐ検索出来て便利。日本語版では主人公パーティ4人の口調の違いが明瞭で、各キャラクターを際立たせる一要素になっているが、英訳版ではそこが感じられにくいのが惜しく思われた。

 

月末に纏めて感想を書くと、内容が希薄になるから個別に書くようにしようかな。
完全自殺マニュアル』が強く印象に残っているけれども、人に薦めるような内容でもない。一番上のやつでいいか。

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)