ywagashiのブログ

徒然なるままに

10月に読んだ本

最近は酷く無気力状態が続いている。これがスチューデントアパシーというやつか。

 

・新釈 現代文(高田瑞穂/著)

受験国語の古典的名著の復刻版。参考書の形式を取っているがテイストは思想書に近いかもしれない。現代文読解の核心は論の展開を正確に「追跡」することである、と著者は言う。単に書いてあることを受け止めるだけの自己本位的な読み方では「追跡」とは言えない。筆者の書いたことを、それが書かれた背景の中で読み取ろうとする能動的な態度こそ、「追跡」の一語に込められた意味だろう。こうした姿勢の重要性は本来はあらゆる公的表現の読解に当てはまることではあるが、一義的な読解を要求する入試の場においてこと強調される。

エクリチュールの零度(ロラン・バルト/著、森本和夫/訳)

久々に難しい本を読んだ。訳がわからない。エクリチュールとは、言語と文体の間にあって、人々の言語活動を支えている因子である。書き言葉における役割意識のようなものだろうと解釈したが、これはたぶん心得違いだろう。ここでは、社会的呪縛から逃れた純真無垢のエクリチュールの存在について熱心な考察が披露されているようだが、その割にはいちいち修辞を凝らした大仰な文章である。むかつく。いつかまた再挑戦しよう。

・ヨーロッパとは何か(増田四郎/著)

ヨーロッパというまとまりの成立過程について論じた本。古代から中世の転換期に焦点を置き、「ギリシア・ローマの古典文化+ゲルマン民族の精神+キリスト教」というヨーロッパを特徴づける三要素がいつ、どこで、どのように結びついたのか、丁寧に紐解いていく。半世紀以上前に書かれた本という事もあり、世界史に造詣が深い人からすれば幾つか突っ込み所もあるようだけれど、とりあえず面白く読めたので満足。

・文学入門(桑原武夫/著)

どのような文学作品を、どう読むべきか、この率直な問いに明快な答えを与えてくれるのがこの書。作者と文学、読者の間に働く相互的作用を「インタレスト」というキーワードを使って理論的に説明し、その上で優れた文学、特に古典的名作を読むことの重要性を訴える。名作は読者の人格に変容をもたらすばかりでなく、真の独自性を測るための万人共通の物差しともなる。単に娯楽のためだけであれば乱読も悪くないだろうが、それ以上のものを文学に求めるのであれば、まずは選び抜かれた名作に触れておきたい。

 

読んだ冊数は少なかったが、得たものはそれなりに大きかった。
今後は岩波新書青版と、世界的名作を多く読んでいきたいと思う(行動に移すとは言っていない)。
いずれも良書だと思うが、一番下のがとりわけ良かった。

文学入門 (岩波新書 青版)

文学入門 (岩波新書 青版)

  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1950/05/05
  • メディア: 新書