ywagashiのブログ

徒然なるままに

2021/9月に読んだ本

後期授業が始まる。モラトリアムを満喫できるのはこれが最後かも...?

 

・日本文学全集01 古事記池澤夏樹/訳)
天地開闢から推古天皇の時代までを記した歴史書古事記』の現代語訳。こなれた言葉に訳しつつ古典の情緒を残しており、訳者の苦心を窺わせる。本文下にレイアウトされた脚注は直截でわかりやすい。上・中・下巻の3パートに分かれているが、物語として楽しいのは上巻および中巻の一部であろう。上巻で神々の世界を描いていたものが、いつの間にか人間同士の話に変わっているのが面白いところ。これは古事記に登場する神々の多くがどこか奔放で俗っぽく、人間との懸隔を感じさせないからだと思われる。神々と人間の世界がシームレスにつながる、この世界観が古事記の一つの魅力として感じられた。

・精神科の薬がわかる本(姫井昭男/著)
精神科で処方される向精神薬についてカテゴリ別に解説した本。医療関係者はもとより、患者本人やその支援者など幅広い読者を想定して書かれている。薬物動態や作用機序に関する説明は簡潔明快で、門外漢でもイメージをつかみやすい。加えて、長年の経験をもとに各薬の使い分けや使用法のアドバイスを与えており、実際の臨床現場でのシチュエーションを想像する参考になるだろう。自分の関心の向く先とはわずかに内容がズレていたので別の類書に挑戦したい。

古事記 日本の原風景を求めて(梅原猛、上原正昭、三浦佑之、上野誠/著)
大和・出雲・日向を中心に古事記の舞台となったスポットを写真とともに巡る、旅行欲を掻き立てられる一冊。古事記に関する最新研究や学者同士の対談も収録しており、少ないページ数の割に内容は盛り沢山である。「ユルわかり古事記」と称されたコーナーでは、古事記のあらすじを大変ユーモラスに解説しており、読んでいて思わず笑ってしまった。図書館で借りた本だが、古事記ゆかりの地のガイドブックとしてまた手に取る機会があろうと思う。

 

2021/8月に読んだ本

無事に資格試験を乗り越えたので、読書の習慣を取り戻したい。

 

・電力工学(改訂版)(江間敏、甲斐隆章/著)
電力工学の教科書。発電や送配電にかかわる基礎に加え、スマートグリッド福島原発事故のような最近のトピックにも配慮して解説がなされている。電験受験後のレベルチェックとしてこの書籍を手に取ったが、すらすらと読み通すことができ非常に安心した。分野によらず、資格勉強は専門書に手が届くレベルまで知識を引き上げる最短路だと感じる。

・図解入門 よくわかる最新「鉄」の基本と仕組み(田中和明/著)
鉄の物性や技術、文化などについて幅広くまとめている。材料学の内容ばかりではないため、専門の人が読んでも何かしら発見があるだろう。個人的には、日本神話と鉄の関連の下りが興味深く感じられた。鉄は材料として優れた性質を有するばかりでなく、人類の歴史を探る上で欠かせない手がかりであり、地磁気や生命機能においても重要な役割を担っている。やや説明不足を感じる箇所もあるが、鉄の魅力が満遍なく伝わる良書。

 

夏休みの退屈を嘆いていたらもう半分が過ぎてしまった。
今は神道がマイブームなので、その類の本を読みつつ、
どこか有名な神社に詣でることができたらと思っている。

 



Quine in Python

Quine(クワイン)とは・・・
自身のソースコードと同じ文字列を出力するプログラム。
分析哲学の大家W. V. Quineに因む。

よく知られたやつ

_='_=%r;print(_%%_)';print(_%_)

(出力)

_='_=%r;print(_%%_)';print(_%_)

自分の知る限りこれが最短。

ただし、ファイルの読み込みを許せばもう少し短縮できる。

print(*open(__file__))

(出力)

print(*open(__file__))


更に短いものがあれば教えてください。

Pythonでやっても面白みはない。
文法的自由度の高いRubyなどではもっと派手なものが作れる。

JupyterLabを起動するためのショートカットアイコンを作る

JupyterLabは便利だ。しかし毎度ターミナルから起動するのは面倒くさい。そこで今回はデスクトップ画面から起動するためのショートカットを作成した。簡単な内容だが、誰かの役に立つかもしれない。

具体的な手順

  1. バッチコマンドを動かすPythonスクリプトを作成
  2. pyinstallerをインストール
  3. 1で作成したPythonファイルをexe化
  4. ショートカットアイコンを作成
バッチコマンドを動かすPythonスクリプトを作成

Pythonしか使えない自分はosモジュールを使う。subprocessでもOK。

# main.py
import os
os.chdir("C:/Users/MAIN") # ディレクトリを指定する必要がある場合
os.system("py -m jupyterlab")
pyinstallerをインストール

pyinstallerは.pyをexe化するために必要なライブラリ。
コマンドプロンプトを起動して、pyinstallerをインストールする。

py -m pip pyinstaller
main.pyをexe化

続けて作業ディレクトリに移動し、

py -m PyInstaller main.py

これでJupyterLabを起動するためのmain.exeができてるはず。

ショートカットアイコンを作成

最後にこのショートカットをデスクトップに配置して、適当な名前に変えた上、プロパティからJupyterLabのアイコンに変更して完成。アイコンは公式のGithubからダウンロードできる。



絶対もっと賢い方法があると思う。でも汎用性は高いので多少はね?

2021/5月に読んだ本

今月は1冊のみ。積読本は溜まっていくばかり。 

 

・フランス現代思想史(岡本裕一朗/著)

構造主義と続くポスト構造主義を中心とする、サルトル以後のフランス思想についてコンパクトにまとめられた一冊。数ある思想群の中でも、フランス現代思想はとりわけ難解とされる。そこにはソーカル事件で暴露されたような自己欺瞞的側面もありはすれど、「西洋近代を自己批判的に解明する」という共通のテーマの下なされた議論の数々は、我々が現代を捉えなおす上でもいまなお重要な道標となる。ジャック・デリダの死によってフランス現代思想の歴史には一区切りがついた。しかしその精神、エクリチュールはメディア論へと主題を変えつつ後世へと継承されているようである。

 

そろそろTOEIC電験へむけて本腰を据えなければならない。
と思いつつ、新しいパソコンとVRヘッドセットを買ってしまった...。
今更ですが下記リンクはアソシエイトではないのでご安心を。

 

 

2021/4月に読んだ本

最近は時間の進みが凄まじく速い。1分が40秒くらいに感じられる。

 

・群衆心理(ギュスターヴ・ル・ボン/著、桜井成夫/訳)

群衆心理について系統的な分析を行った、おそらく初めての書。歴史観察に基づく、帰納的な考察から、群衆の衝動性、被暗示性、凶暴性、保守性といった諸相が明らかにされる。その背景には、市民革命を推進し政治権力を握りつつあった市民階級への危機感があり、群衆心理のネガティブな側面が強調される嫌いがあるにせよ、ル・ボンの議論はつとめて中立的な観点から進められているように思う。その透徹した洞察には、社会心理学の嚆矢とするに相応しい輝きがある。

・FinTech イノベーション入門(西祐介ほか/著)

FinTechとは、金融と技術を掛け合わせた造語であり、ICTと金融サービスの融合による革新的な動きを指す。本書は、そのコア技術やビジネスとの関連、課題や展望について広く浅くカバーした一冊である。実務を意識しているのか、Pythonによるデータ分析の実装例なども載っており個人的には参考になった。暗号通貨が世間を賑わしていることからも予期できるように、FinTechは今後も存在感を高めていくだろう。時代の波に乗り遅れないようにしたい。

・重力とは何か(大栗博司/著)

難解な相対論、超弦理論について一般向けに噛み砕いて説明した一冊。著者が第一線で活躍する物理学者ということもあり、ホログラフィック原理のような高度な内容にも踏み込んでいる(適当)。とにかく最先端の物理学が何か得体の知れないものと向き合っていることは理解できた。理論物理学者とは何とも酔狂な人たちである。興味深いことに、著者は宇宙論の哲学的側面にも言及しており、いわゆる人間原理に安易に頼らず必然性でリンクした理論構築の意義について述べている。自分は人間原理の熱烈な信奉者ではあるが、著者の物理学者としてのその姿勢には大変な感銘を覚えた。

ベーシック・インカム(原田泰/著)

社会保障財政が逼迫するなか、話題に上ることも増えたベーシックインカム(BI)。その論点を整理する目的でこの本を手に取ったが、大はずれを引いてしまったようだ。著者は、単純なバラマキ政策によって、恣意性の入り込む余地を無くし、捕捉率の問題を回避すると同時に、行政コストを削減する=BIのメリットと考えているようだが、そんなのは分かり切ったことである。重要な論点である(と僕は思っている)、JGPとBIの比較だとか、社会保障の簡素化の影響だとかには全く触れられず、代わりに本筋とは何ら関係ない話題に貴重な紙面を費やす一方で、容易に想定される数々の反論に対する回答は投げやりで、肝心の試算も極めてお粗末なものである。BIの構想自体は面白いと思うが、推進派の学者がこの様子では到底、諸手を挙げて賛成する気にはなれない。

 

近頃は更新が遅れ気味で慙愧の念に堪えない。そもそも読書記録をこういうオープンな場所に残すのは継続のためであるからには、簡単な理由で更新を止めるわけにはいかない。余裕が生まれたら、資格か思想か投資かあるいは他の何かについて記事を書いてみようかと思っている。

群衆心理 (講談社学術文庫)

群衆心理 (講談社学術文庫)

 

 

 

2021/3月に読んだ本

とうとう大学3年生になってしまった。何か目標を持って頑張りたい。

 

・理科系の作文技術(木下是雄/著)

言わずと知れた名著。入学前に一読して以来本棚で放置していたが、あらためて目を通してみると、自分の経験も重なって、納得がゆく部分が多い。本書では、漢字の用い方からテーマの選定法まで、作文にまつわる勘所が満遍なく押さえられている。特に、pp.203~205にある、文章執筆の全般的な注意事項だけでも確実に頭に入れておきたい。今後は本格的なレポートに取り組む機会も増えるだろうし、やがては卒論も書かねばならない。実践の中で適宜この本に立ち戻り、自らの糧としたい。

・図説・標準 哲学史貫成人/著)

著名な哲学者やその思想について、それぞれ見開き数ページで解説されている。各哲学者の問題設定やそこに至る経緯がはっきりと述べられており、筋道を立てて論理を追うことができる。思想同士の関連や対立構造についても説明が丁寧なので、思想史の展開を立体的に把握する視点も養われるだろう。個人的に有難かった点として、近代以降の扱いが充実しており、おかげで今まで敬遠していた分析哲学の論点が何となく掴めた。現代哲学の難解な概念を明快に説明できる所が、著者の造詣の深さを物語っている。

西洋美術史入門(池上英洋/著)

最初に美術学の基礎、中でも美術と社会・文化の繋がりを探る図像解釈学(イコノロジー)を紹介し、続けて主要な芸術家や技法を取り上げながら西洋美術史をおさらいする。説明は的確だが、特に後半は教科書的でかなりあっさりしている。個人的に驚きがあったのは、印象派絵画の発端が色彩理論に裏打ちされた実験的試みであったという点。美術を真に理解するためには、視覚的な情報だけで満足せず、様々なバックグラウンドにも思いを巡らせる必要がある。娯楽が発達した現代において、美術が確固たる地位と人気を保っていられるのは、そういう知的な奥深さがあるからだろう。美術館に足を運んでみたくなる一冊。

 ・ウォール街の物理学者(ジェームズ・オーウェン・ウェザーオール/著、高橋璃子/訳)

経済物理学の発展の歴史をドラマティックに描いたノンフィクション。経済物理学は二つの学問の接点に誕生したユニークな分野であり、モデル化→実証といった物理学の理論構築の手法を応用し、経済現象を解明することを目的とする。ファットテールやブラック・ショールズなどお馴染みの話題から、ゲージ理論を物価指数の算出に応用する話などもあって、なかなか興味をそそられた。著者は物理学者なので、理論面の詳しい解説を期待したが、その辺りは控えめであった。ちゃんと中身を見てから買おう。

 

最近は似たような本ばかり読んでいて少しマンネリ気味。
4月は少し趣向を変えてみたいと思う(思うだけ)。

図説・標準 哲学史

図説・標準 哲学史

  • 作者:貫 成人
  • 発売日: 2008/01/01
  • メディア: 単行本