ywagashiのブログ

徒然なるままに

12月に読んだ本

多くの人に助けられた一年だった。2021年もよろしくお願いします。

 

・敗者のゲーム(チャールズ・エリス/著、鹿毛雄二/訳)

数多の機関投資家が市場を牛耳る今、証券取引はミスを犯した者が負ける敗者のゲームとなった。この過酷な状況で個人投資家がアクティブ運用でプロと渡り合うのは不可能に近い。だから大人しくインデックス投資をしていなさい、という話。投資を行う上で重要となる心構えについても多くのアドバイスを与えてくれている。堅実なリターンを望むなら、運用の目的と方針を明確化した上で、パッシブ運用という防御に徹することが最も無難な方法ということである。確実な方法というのは、想像以上にシンプルだが、やや面白みに欠けるように思う。

・西洋建築様式史(熊倉洋介、末永航ほか/著)

西洋建築について興味が湧いたので、図書館で面白そうな本を借りてきた。本書では、ギリシア建築に始まり現代まで続く西洋建築の歴史を、功績のある建築家を取り上げながら、丁寧に紐解いている。連続的な歴史の中で、換骨奪胎を繰り返してきた建築様式の変容の流れが感じ取れて良かった。色々と学びはあったものの、前提知識の不足ゆえ本書の真価を引き出せていない憾みがあった。本書は建築史にフォーカスしているので、素人が各建築様式の特徴を系統的に学ぶ目的には向いていないかもしれない。

ファイナンス理論入門(冨島佑允/著)

著者が京大→CERNクオンツMBAとかいう凄い経歴の持ち主。CAPMやマルチファクターモデル、VaRなどファイナンス理論の基礎を成す概念について手厚く解説している。高度な数学に踏み込まず、噛み砕いた説明がなされているので、直感的なイメージを得るのに役立つだろう。個人的にはポートフォリオ理論の章が特に興味深く感じた。今後ファイナンス理論を学習する足掛かりとしたい。

・大人のためのメディア論講義(石田英敬/著)

友達がメディア論について語っていたので適当な本を一摘み。記号論との関係からメディアを捉えなおし、デジタル・メディアが人間環境に及ぼす影響を考察している。問題の核心は、情報が二進数に変換され人間の制御から離れつつあること、そしてこれがメディアを介して知らず知らずのうちに人間の意識を造り出していることだろうか。テクノロジーの進歩に注意を促す文脈自体は珍しくないが、記号論やメディア論に基づいた視点は目新しい。著者の唱える解決策には中途半端な印象を受けたが、デジタル・メディアとの付き合い方を再考する必要があることには同感。

 

今年は読書記録ばかりでなく何かしら有益な記事が残せたらと思う。
本棚に積み重なっている数々の小説も消化したいが、精神的にキャパシティ不足の日々が続いている。

大人のためのメディア論講義 (ちくま新書)

大人のためのメディア論講義 (ちくま新書)